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ゲームプログラマーが独立起業してみるブログ

就職→退職で知る「周囲の納得なんか要らない理由」

めでたく無職! えのきです。

 

最終出社の日がやってきて、つつがなく退職できました。

憧れ目指して入ったゲーム会社でした。いままでホントにありがとー。

 

この会社に入ることを目指した頃から今に至るまでを思い返してみてたんですが、「納得のコスト」とどう付き合うか?というのが自分の仕事に対するテーマと言える気がしてきたので、少しまとめてみたいと思います。

 

ただ単に退職エントリーを書いてみたかっただけという側面もありますが(笑)

 

就職活動で予感した「納得のコスト」

ゲーム会社といえば、ごく一般的な目線からは「普通の」では無い、「レアな」就職先かと思います。少なくとも自分の高校在学当時はそうでした。なので、

「俺はナムコに入ります!」(※)

って就職希望先を表明した日には、何夢みたいなこと言ってんだ?と、担任教師には全力で反対され、同級生には半笑いされたもんです。

でも私には自信というか予感というか‥ 確信があったんですよね。プログラミングとゲーム開発は、きっと自分の天職だって。

しかしそれをまわりに納得してもらうのは難しい事でした。得心いくだけの材料なんて揃えられるわけありません、だって子供なんだもの。型にはめようとされたら、理詰めじゃ絶対抗えない。

私が採った戦法は「ドロップアウト」でした。公式には就活しないで、勝手に作品作って求人応募とかしてましたね。まぁ結果として、卒業時に進路が決まってない状況にはなっちゃったんですが‥ でもあのまま大人しく型にはめられて就活してたら今の自分は無かったかもしれないと思うと、ゾッとします。思った通りにやってみて、本当に、良かった。

当時は意識してなかったですが、今にして思えばこれは私が初めて「納得のコスト」へのスタンスを明らかにした出来事でした。即ち、「納得のコスト」には正面から向き合わない

 

※仮にナムコとしただけで、私はナムコに就職→退職したわけではないです。

 

会社組織で確信した「納得のコスト」

それから紆余曲折を経て。めでたく宣言どおり、憧れの会社に入社しました。やったぜ!

新人のうちはただただ夢中で仕事してましたね。自分の確信した通りの部分もあったけど、自分の確信が外れている部分もあったりで。まるで答え合わせのような感覚で働いていたのを覚えてます。

あらかたの答え合わせが済み、いつしか部下も付いた頃。コストを意識するようになった自分が思ったのは、組織運営の最大コストは「納得感の醸成」に掛かってるんじゃないのか?という事でした。

何かを会社に提案しようとする際、まず部下は上司に納得してもらわないといけませんよね。そのために考察したり資料を作ったりプレゼンしたり‥ 結構な時間をそこに費やします。上司はその更に上司を。最終的には社長を。社長は社長で、出資者に納得してもらわないといけませんし。

納得が必要なのは上司に対してばかりとは限りません。部下に対しても、納得のプロセスは重要です。上下関係にあれば命令という形で動かす事もできるんですが、それでは十分なパフォーマンスを発揮してもらえず、あまり良い結果には繋がりません。おいそれと省略できるプロセスではないのですね。

この幾重にも折り重なる膨大なコストと、集団として動くスケールメリットが折り合ってるかどうかが、会社の価値を決めるのかなぁと。組織人として働く中で、自分はそのような確信を深めていきました。

上司部下問わず、有ること無いことテキトー言って、結果が出れば良し、出なかったらテヘペロ!っていう戦法でこのコストを回避するタイプの人間は一定数居ました。これは上がコントロールできてるなら立派な「納得のコスト」の低減策になり得るので、一概にダメとは思わないんですけど‥ 往々にして上をも欺く「嘘」になっちゃいがちなんですよね。「嘘」はリスクの移し替えをしてるだけなので、長い目でトータルで見るとダメだと思います。でもそれをチェックするために気を払うのもコスト増になるので‥ まぁ、バランスが重要ってわけなんですけども。面倒な事この上ないですね。

規模が小さめで急成長中の会社なんかはたぶん、この「納得のコスト」が極小になってるんだと思います。「嘘」の心配のない信頼できる少数メンバーがロス無くゴールに向けて注力できるから、スピーディーに成果を生みやすいんでしょう。で、成功の結果デカくなって人が増えて「納得のコスト」が膨れ上がり、いつしかコストが成果に肉薄してきて「嘘」も蔓延して‥ 大企業病ってやつがそうなんでしょうね。

管理職になった私は、会社をデカいサイズのまま「納得のコスト」を極小にできるようにして「ぼくのかんがえたさいきょうのかいしゃ」にするのを目標に日々働いていました。

が。思い出しちゃったんですねー、幸か不幸か。

「そういや俺はモノが作りたくてこの会社に入ったんだった!」

 

独立起業で回避した「納得のコスト」

インターネットやモバイルプラットフォームなどの世の中の仕組みが整い、かなり小規模に制作から販売までを完結させることが可能になってきました。作るモノによっては、組織のスケールメリットより「納得のコスト」のほうが圧倒的に上回ってしまう状況が、普通にあり得るのです。

私が持っているアイディアは、エンジニア個人(つまり私ひとり)で十分に実現することが可能なモノでした。会社の中で提案することも検討してみましたが、「納得のコスト」に押し潰されちゃう可能性が高いかなぁと思って止めにしました。

「うーん、じゃあしょうがないなー、独立すっかなー」

まぁそんな感じで、ゆるーく独立と相成ったのです。

独立に際しても、「納得のコスト」はゼロってわけではないですね、普通は。「家族の納得」とか「出資者の納得」とか、色々あると思います。しかし私は、それらの悉くを回避する事にしました。

「家族の納得」は、独身の私はゼロにできました。両親はまだ健在なのですが、就活しない高校生の我が子を好きにさせた親なので、おっさんとなった今何をしようが全く意に介しません(笑) あ、「こいつ結婚する気ないのか‥?」という心配は、してるようですが。

「出資者の納得」は、最初は自己資本のみで個人事業としてスタートする事でゼロにしようと思ってます。出資を募るにしても、個人事業で成果が出てからであれば「納得のコスト」は少なくて済むことでしょう。というかモノ作りに集中したいので、スキップできる手順はできるだけスキップしたい。

「友人の納得」は必須じゃないけど、意外と一番面倒だったりしますね。ゆるーいまま伝えると「そんなんダメだろ!」とか心を折りに来るやつもたまに居たりするので(笑)、あんまり詳しく言わないでボカして伝えるようにしてます。いやね? 心配してくれる友人がいること自体は、嬉しい限りなんですけど? 一緒に事業やる仲間でもない人間に納得してもらうための労力は、ただの「納得のコスト」なので。会社でさんざんやったのに、プライベートでまでやりたくないって話です。

 

 

 

まぁこのような就職→退職を経た結果、「納得のコスト」に正面から向き合わず、見る人が見たら「逃げてる!」と言われちゃうかも知れないスタンスの大人が出来上がったわけですけども。

周囲の納得が自分にとって何のメリットもない時もあれば、周囲の納得は大事なんだけどコストに見合わない時もあるって事を肌で知り、「周囲の納得を無条件に必須と思わなくていいんだな!」という答えを得ちゃったので、まぁしょうがないかなーと。

もしもこれを読んでる就活中の若い人で悩んでる人が居たら、ホント声を大にして言いたい。

「大人の言うことが正しいとは限らんよ!」

「自信があるならやっちゃいな!」

もちろん私も「正しいとは限らない大人」のひとりなので、参考にするかどうかは自己責任でお願いしますってなもんですけどね、テヘペロ!

 

ゲーム会社の退職エントリーだってのに、なんかちっともエンタメじゃないなー、くそー。

以上、まだ会社辞めた実感が全く湧いてない、えのきでした。